新・田村麻子のオペラな人生 完璧とは、一朝一夕ではない
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完璧とは、一朝一夕ではない

今日は予告どおり(笑)、 ヴェローナのテアトロフィラルモニコに 2回目のアンナボレーナを観に行きました。 前回、あふれる若さいっぱいで、 いい声の出るままに歌っていた20代後半のテノール君が、 無論相変わらずがんがん歌って、ブラーボも、拍手も 沢山受けていたのですが、 私には、少し行き詰り始めていたように見えたこと、 それに引き換え、 前回よりも調子がよくなく、 なんとかその舞台を乗り切ろうとしていたデヴィーア様の 本物のテクニックにほとほと感嘆させられたこと、など 結果として、彼女としては前回よりも よい出来ではなかったのにもかかわらず、 私が、学んだことは大きかったのでした。 若い時には、いい声が出るとテクニックを考えるより先に これ幸いと、そのままそれで歌ってしまうのは 古今東西同じだと思います。しかし、 残念ながら、何の問題もなく、 そのままのいい声で、いつまでも歌い続けられる歌手などそうそうおらず、 残念ながら、どこかで問題がおこったり、歌えなくなる時が ほとんどの場合やってきます。 それは、いわゆるスランプ、などと一般的に言われたりもしますが、 人によっては、そのままもう二度と昔のように屈託なく 歌えなくなる人もいるほど、深刻なものであり、 歌うということ(声楽唱法)は、 「単純」と「複雑」なことの諸刃の剣だといえます。 さて、そんな事にならない為にも、 (というか、大抵の歌手はそういうことが起こってから、 気づくのですが、、、) そういう時にこそ、なぜ良い声が出るのかという メカニズムを知る必要=「テクニックの勉強」が 必要となってきます。 デヴィーア様のように58歳で、 体力も筋力も、若い時と比べると当然落ちてきている 歌手が、それでも、 世界中を見渡してもなかなか100発100中で決められる事のない ハイCと言われる音の、そのまた何度か上の音域である「超高音群」を、 毎回、聴衆を裏切ることなく美しく響かせてくれることは 本当に、尊敬に値することであり、 その裏には、一体そのために何万時間費やされたことかと思うのです。 今日の公演、冒頭でも述べたとおり、 火曜日と比べて、彼女は少々さえない様子でした。 色々理由はあると思います。 公演が夜ではなく昼だったこと、 1,2日おきに4回歌ってきて、少し疲れてきているであろう事、 あとは、聴衆の反応にも微妙にも左右されるものですし、、、 そんな中、同じレパートリーを持つ、 同じソプラノとして舞台を観ていた私にとっては、 ああ、こうしたいだろうに、今は、こうして避けたのか、、、、とか ここは、指揮者がもっと助けてくれればいいのに、、など、 色々と、彼女の立場に立っては、物思い、感じていたのですが、 それでも、一番感銘を受けたのは、 彼女がなにがあっても、 絶対に「自分の出来ることを崩さないこと」でした。 それは、裏を返すと、 自分のテクニックを何よりも信じて、尊んでいるからであり、 その中で見え隠れしたのは、 長年のキャリアの中で培ってきたものへの信頼でした。 あまたある楽器の中でも、完璧という言葉からは最も遠い、 「身体」という不安定な楽器をもつ歌手という生き物の中にあって、 「完璧」と異名をとるデヴィーア様をもってしても、 キャリアの始めから、完璧なはずはなかったと感じました。 今現在の歌を聴くと、つい最初から完璧だったような 印象を受けてしまいますが。 30年あまりのキャリアの中で、 少しずつ彼女は完璧になっていったのでしょう。 テクニックの完全さを追い求めると、ともするとドラマがうすれてしまったり、 退屈になるという反面があり、 たしかに、彼女の舞台ではもっと何かがほしくなる瞬間が有るのも事実です。 しかし、 テクニックは、 誰も助けてくれる人のいない舞台で、 必ず自分を助けてくれる唯一のものです。 今日もいい勉強をさせていただきました。 人気blogランキングへ
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